小説:海と月の迷路(大沢在昌)
軍艦島が炭鉱の島として栄えていた戦後。
島に赴任したばかりの若い警察官が、遺体で見つかった少女の事故死を疑い、独自に捜査を進めていく。
密室ともいえる島でおきた少女の死には、8年前に亡くなった別の少女の死とつながる共通点があり・・・。
主人公が定年を迎え、送別会が開かれた夜。
本人の口から語られる若かりし頃に関わった事件の話。
ざっくり言うと警察小説。
だけど、その一言では表せないくらい、人の感情や狭い島で暮らす人たちの人間関係、人の醜い部分や弱さが丁寧に描かれている。
最終的に、主人公の警察官によって犯人は暴かれるのだけど、犯人が分かったすっきり感より、いたたまれなさが残る。
主人公の警察官の後悔と、島に暮らす人々が悪意もなくつくった島の空気がそうさせたのだと思う。
この小説に出てくる人たちは何も特別な人ではない。
私だって、この島にいたら同じことを・・・、
そんな気持ちになる、考えさせられる話。
丁寧に描かれているぶん、若干長さを感じたが。